私の部下・Aは、毎朝元気の良い声で挨拶していて、非常に好感の持てる社員でした。私もAを(部下として)気に入っていて、よく話しかけ、食事にも誘っていました。ところが、あるときから、誘っても断られるようなりました。そのときは嫌われたのかなとも思いましたが、その頃のAは、以前よりやせて見えていたこともあって、たずねてみました。
「最近、Aさんは食事に誘っても来ないね。ダイエットしてるのか?」
「はい」
「今だって十分やせすぎだよ。もっと食べなさい。」
「やせていませんよ~」
結局そのときも食事に連れて行かず、AがいないときにAの同僚たちにも彼女のことをたずねてみました。すると、誰もが
「誰が誘っても行かなくなった」
「弁当すら持ってきていない」
「昼食は摂っていないらしい」
と口にしたのです。
心配でしたが、女性がダイエットのために昼食を抜くのはよく聞く話だと思っていましたから、女性は大変だなと同情しただけでした。心配もしましたが、それよりも「ダイエットを自分に課して、実際にきちんとやせているのだから大したものだ」とさえ思っていました。
そしてその一ヵ月後、Aは出勤中に倒れ、病院に運ばれたのです。
すぐに見舞いに行ったAの同僚から話を聞くと、原因は栄養失調。
そして「拒食症」の診断結果が出たと知らされました。
拒食症なんてモデルや芸能人がなる病気だというくらいにしか思っていなかったので、すぐには信じられませんでした。しかしその一方で、これまでの経過を考えると、もし、あの状態に病名をつけるなら、拒食症以外には考えられないと納得もできました。
すぐに見舞いに行き、Aには休職届を出すよう伝えました。
今にして思えば、「やせすぎなんじゃないか」という言葉は、病気への無知からくる失言だったと反省しています。